諺  荒木茂信

「馬の耳に念仏」「蛙の面に水」「糠に釘」「我が身をつねって人の痛みをしれ」
「無理が通れば道理が引っ込む」こんな言葉がとてもよく似合う組織と会社がある。
言わずもがなである。名前を出すと自分が情けなくなるので、敢えて出さない。終い
には想定外という想定通りの言葉を言い放ったし…全く付ける薬がない とはこのこ
とか。しかもこの期に及んで誰も責任をとろうとしないし、あまつさえ、責任を追及
しないでくれと懇願する始末である。更に保証をする側がご丁寧に何十ページにもわ
たって詳しく詳しく想定外が無いように作ってくれたのは評価に値する。ただ残念な
ことに、詳しいのが災いして相当分かりづらいっていうか、分かんないのが玉にき
ず。惜しい。小生が上司なら、作り直しだね。

六ヶ所村なら知っているが、原子力村の所在地は分からない。ウワサではかなり
大きいらしいが、目立たないのが不思議である。そのまま無くなってもいいんだよ。
無責任の巣窟のウワサもあることだし。

子どもをしつけるのに、べからず法みたいに言った方が楽だよね。代表的な言葉と
しては、「ちゃんと片づけなさい。あなたが散らかしたんでしょ。」「嘘を言っては
だめです。」「自分の身になって考えなさい。」「約束は守りなさい。」…等であ
る。高校をところてんのように押し出されたような小生でも分かるのだから、ほとん
ど、最高学府を終了している原子力村の住人なら、釈迦に説法ですね。それにして
は、放射能で思いっきり汚したにもかかわらず、片づけないのはどうしてかなあ。せ
めて直ちに影響はない等と言わないで欲しいよね。って言うかあ、やっぱ、片づけな
さいよ。なんと言っても取締役会の皆さんが、手本を見せるべきであります。大丈夫
です、直ちに影響はありませんから。

九月二十九日に福島第一原発のある大熊町に行ってきた。自家用車で規制区域に入
れるようになったから、某氏の家に行って荷物を取りに行く役目である。と言えば聞
こえはいいが、付き添い役だった。五十歳以上という条件だけで約一名加えられ、合
計三名のはず…だった…当日になり某氏は体調不良と言うことで、ドタキャン…彼の
妻君が広野町の体育館で出迎えてくれ、住宅地図とガイガーカウンターと搬出物の名
簿を渡されて、手を振られた…全く知らない土地で放射能いっぱいで、しかも、方向
音痴でキャーキャーうるさくて、好奇心だけは旺盛な奴と一緒なのが一番不安な要素
でありました。広野町の体育館で白い防護服を着たが、他にも沢山私たちと同じよう
な人たちが居て、まるでシロアリみたいでした。大熊町へ向かっていくと、誰も歩い
ていないのに気づいた。対向車の運転手も小生と趣味が同じなのかお揃いである。道
路のアスファルトは波打ち、割れていた。借りてきた放射能測定器をカーナビに貼り
付けていたが、北上するにしたがい、グングン上がっていく。気にしたくはないが、
助手席からいちいちワーワーやかましいから、目がいく。そのうち、おとなしくなっ
たと思ったら、カメラを構えていた…富岡町になったらいきなり、市街地へ入れと言
う。入ると時間が止まったような風景に圧倒されてしまった。地震でペシャンコに
なった住宅もあれば、棟上げの済んだばかりの柱だけの家もあった。そして、何処を
走っても動物のフンだらけでした。避けきれずかなりフンだ。

さて、寄り道を少しと迷ったふりをして何とか某氏宅へ着いたら、ガイガーカウン
ターは振り切れる寸前。やっとの思いで新築し、これから住むはずだった某氏夫妻の
無念の大きさを思った。どんな慰めの言葉も彼らの心の空白を埋めることは難しいこ
とを容易に分かった。そして、相当の期間住めない現実も敢えて数字は出さないが、
カウンターを通じて知らされた。某氏からの依頼内容を反芻しながら,ほぼこなした
が、犬小屋の場所を特定することは、草木の繁茂でできず、犬の生死は確認できな
かった。ちなみに、某氏宅は第一原発より約7キロメートル。見えない恐怖がどんな
事態なのか、いわき市まで戻ったとき、大きなため息が自然と出たとき実感した。そ
れから数日間、異常な眠気と倦怠感、吐き気、下痢に悩ませられることになる。

六カ所の再処理がどれだけの経済効果があるのか分からないが、逆のことを言え
ば、どれだけの保証能力があるのか問いたい。無いなら止めるのが、営利企業として
当然の選択肢である。少なくとも東京電力は無かった。「喉元過ぎれば熱さを忘れ」
そのうちまた、「後の祭り」にならないためにも、脱原発は人類が生き延びるための
もっとも現実的な方法であることは、万人の意識に芽生えたはず。

後日、方向音痴殿より解毒と言うことで、玄米がゆとスギナ茶が送られてきた。や
かましいだけでは無かったようで、病人食と思いつつ有り難く食す。

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